研究会・イベントのご報告 詳細
「フィジカルAIと半導体 -業界縦断の連携環境整備-」
| 主催:(一財)機械振興協会経済研究所 第496回機振協セミナー「フィジカルAIと半導体 -業界縦断の連携環境整備-」開催報告 掲載資料あり | |
|---|---|
| 開催日時 | 2026年4月24日(金)13:30~15:00 |
| 場所 | WEBシステムにより開催(Zoom) |
| テーマ | 「フィジカルAIと半導体 -業界縦断の連携環境整備-」 |
| 講師 | 講師:(一財)機械振興協会経済研究所 名誉フェロー 井上 弘基 氏 モデレータ:(一財)機械振興協会 理事 兼 経済研究所所長代理 北嶋 守 |
| 内容 |
2026年4月24日(金)にWebシステムより、第496回機振協セミナー「フィジカルAIと半導体 -業界縦断の連携環境整備-」を開催しました。講師は機械振興協会経済研究所名誉フェローの井上弘基氏にお願いしました。なお、モデレーターは、機械振興協会理事兼経済研究所所長代理の北嶋守が務めました。当日は、130名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただきました皆様に、厚く御礼申し上げます。【講演内容】国内半導体産業の根底に「先端半導体の需要不足」や「大口顧客の不足」という問題があり、他方で「デジタル赤字」は巨額に上っている。そこで、本講演では、フィジカルAIと半導体産業を巡る現状と課題について、日本の政策動向から産業構造、国際競争までを通じて論じつつ、分析をした。本講演の冒頭では、国内半導体産業の政策動向や現状について触れ、その課題を指摘した。まず、政府はAI・半導体を危機管理投資・成長投資の筆頭に掲げ、地方・地域振興にも効果が出ていると主張している。しかし、その象徴例であるTSMCの熊本進出を分析すると、波及効果は不動産、運輸、観光など周辺産業に偏り、地場の半導体装置・部材企業への波及は限定的である。 半導体工場の誘致・建設を是とする、供給側に偏った政策となっており、元来日本半導体(ロジックチップ)衰退の背景にあった、国内における「先端半導体の需要不足」という視点が脱落している点が強調された。現にラピダスの事例では顧客開拓が難航し、政府が設計費の大部分を補助することで需要を創出せざるを得ない状況にある。微細化に伴いチップ設計費が数百億円規模に膨らむ一方、日本の機械産業は、米中のように、最先端チップを伴う競争力構築という路線を選択できず、既にカタログに載ったチップを使いこなすのが精一杯である。また、データセンター分野でも大口顧客はGAFAMなど海外大手に依存しており、国内にリーディングカスタマーが不在である点が共通の課題として示された。これらを踏まえ、今後は供給網の視点から、「デマンドチェーン」の拡充へ、取組みの重点を移していくことが不可欠である。 こうした問題意識を踏まえ、講演の中核として提示されたのが「フィジカルAI」である。フィジカルAIは、センサやアクチュエータなどの物理的な機構を通じて環境と相互作用し、得られた入力と動作の結果に基づいて知能を獲得・発達させる、身体性を備えた人工知能とされる。ChatGPTの登場により大規模言語モデル(LLM)が始まり、その後画像と言語を統合して扱うVLM(Vision Language Model)に発展し、現在はVLA(Vision Language Action)モデル、さらに世界基盤モデルとの併用まで進化している。 VLA+世界基盤モデルでは、Googleが先駆し、Nvidiaが環境整備(囲い込み)面で追随しているほか、ベンチャー企業のPhysical Intelligence(π0)や中国勢なども活躍している。彼らはモデル自体の考案・陶冶を、かなり大規模なデータ収集と併せて進めた。今では実世界と仮想環境を横断したデータ活用がモデル性能向上の鍵となっている。 一方で、フィジカルAIを「制御」の視点から捉え直すと、定型業務〜固定環境での精密動作にAIを導入する意味は少なく、産業用ロボット等の最終制御の部分はモデル(ルール)ベースで行う必要がある(AIとのミックスになっていく)。 国際動向として中国の台頭にも注目した。同国における産業用ロボットの国産化率は過半に達し、輸出超過に転じているほか、EVやロボット分野ではAI〜ソフトウェア優先で、急速に進化しつつあり、かつ中国は部品を含むハードウェアでも追いつき速度が速い。加えて、年間数十万台程度のEVベンチャー等が、一斉に自前チップ開発(設計)にも乗出しているように、システム側(半導体需要家)と半導体(供給)側が、互恵的に成長している。 対するわが国機械産業の多くは、与えられたAI基盤〜ソフト開発環境(Google等)を、既存カタログチップ(Nvidia等)上で使って、自社用にソフト面で何ができるか探索・試行錯誤している段階である。つまり米中のように、システム側企業が自前チップを構想する状態になっていない。背景に半導体設計費の巨額化があるが、エンジニアリング的には、チップの全面を設計するのではなく、チップをバラバラに分割したうち、1つの個片だけを設計する方法(チップレットアプローチ)など、中間的手法の可能性も見え始めている。 最後に、機械産業がフィジカルAI活用を進め、ひいては半導体需要家として台頭するためには、人材不足が最大のボトルネックである。AIやロボットを利活用する人材は著しく不足しており、国内育成だけでは対応できない。従来以上に海外人材の活用が必須であり、彼ら彼女らを惹き付けるためにも、起業支援を含む環境整備が不可欠である。 講演後は、モデレーターの北嶋氏より、中国の台頭とスピード感について印象的だったとコメントがあった。また北嶋氏は、中国のトライアンドエラーによる学習・進化アプローチと、石橋を叩いて渡る日本のアプローチの違いについて言及し、日本が学ぶべき点があると述べた。最後に、質問はアンケートで受け付ける旨が案内され、講演は終了した。 このセミナーの資料はこちら↓からご覧になれます。 【セミナー資料】 |














